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バイクは本能をくすぐる装置!62歳現役レーサー中川さんに聞く!バイクの魅力とは?

80年代に若者文化の象徴だったバイク。ユーザーの高齢化が進み「おじさんの娯楽」というイメージが定着しつつある。今では、バイクのメインユーザーは50代以降だという。最も落ち込んでいるのは、かつてメインユーザーだった20~30代だ。

今回の取材を担当するのは、現在29歳、バイクに乗らない世代ど真ん中のライター児島。高校の時に流れでバイクの免許を取るも、今では完全にペーパーライダーだ。

危ないしお金もかかる。移動手段と考えると、バイクは非常に効率の悪い乗り物だ。なぜ僕は、免許を取ったのだろう?縁あってバイク文化の魅力を発信するメディア「ガレージゲート」のライターに選ばれたものの、自分の体験から伝えられるものは思いつかない。しかし、そんな僕が、まっさらな気持ちでバイクを体感することで、素人目線からバイクの魅力を伝えることができるかもしれない。

そこで今回は、バイクの魅力を体感すべく、イタリアの名車「ドゥカティ」を愛し、62歳にしてサーキットを駈ける現役レーサー、中川昌征さんにお話を伺う。骨の髄までバイクの魅力を味わった方の話から、僕は何を感じることができるだろう?

 

バイク好きのバイク好きによるバイク好きのためのガレージ

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奈良市にある中川さんのご自宅。平城京跡地からほど近い、古都の名残を色濃く残す地域。待ち合わせ場所から徒歩で自宅まで向かうと、存在感抜群のガレージが。

雰囲気たっぷりのオープンスライダー式シャッターを開けると、フォルクスワーゲンの車とBMWのバイクが並び、一番端にはオフロードタイプのバイクも見える。

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ガレージの右奥に、何やらもうひとつ部屋があるようだ。中川さんに案内されて、奥のガレージに足を踏み入れると、そこには「これが真のバイク好きか……」と、思わず唸る光景。

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ほんのり漂うオイルの香りとまばゆく輝くバイクが4台。部屋のあちこちに工具やレーシングスーツ、ヘルメットが置かれ、サーキットのピットをそのまま運んできたような空間だ。

こだわりの強さに「お金の持ちの道楽」では済まない、迫力と凄みを感じる。

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バイク好きの夢を具現化したようなガレージに、編集部の面々も興奮を隠せない。中川さんと交流のある編集長Yによると、ここまでの空間を作り出す人は滅多にいないとのこと。

バイク素人の僕にも、こだわりの強さとバイクへの愛が伝わってくる。中川さんは、いつから、どのようにバイクにハマっていったのだろう?

 

バイクよりも車が好きだった?

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レースとバイクが好きというイメージから、荒々しいワイルドなイメージを持っていたものの、目の前にいる中川さんは、物腰の柔らかい穏やかな人物。ときおり見せる屈託のない笑顔からは、少年のような純真さすら感じる。

そんな中川さんがはじめてバイクに触れたのは高校1年生のとき。当時は今と違い、多くの高校生が当たり前のようにバイクの免許を取っていたという。「当時はホンダのCB90っていうバイクに乗っていたんですが、この歳になってこんなにハマるとは思っていなかったですね(笑)」。

ガレージのこだわりようを見ると意外に感じるが、当時は車が好きだったと中川さん。「鈴鹿サーキットにカーレースを見に行ったりしていて、車のレースに興味があったんです。だからバイクはあんまりって感じでしたね」。

そういえば僕も、小さい頃に父に鈴鹿サーキットに連れられ、F1の日本グランプリを見に行ったことがある。当時はF1レーサーになるのが夢だと言っていたそうだ。今ではすっかり関心が薄れたものの、レーサーへの憧れは今でもほんのりと覚えている。

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▲こちらはカーレースに出場したときの写真。今でも1年に1度は車のレースにも出場している。

18歳になった中川さんは免許を取得し、レース参戦を目的にサーキットに通いながらドライビングテクニックを磨いていく。デビュー戦でいきなり優勝し、3~4年間はカーレースに熱中していたという。

しかし、仕事と資金不足が重なり、レースの世界から次第に離れていく。仕事も忙しくなり、徐々に趣味でたしなむ程度になっていった。

そして、長いブランクを挟んだ後、バイクレースの世界に引きこまれていく。車ではなくバイクの世界に進んだ理由は何だったのだろう?

 

中川さんを魅了したバイク、ドゥカティの魅力とは?

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バイクを始めたのは、50歳の節目に新しいことにチャレンジしたいという想いがきっかけだったと中川さん。「50歳からカーレースに参戦ってあんまりめずらしいことではないんです。でも、50歳からバイクレースに出る人はそんなにいない。どうせやるなら、他の人があまりやっていないバイクに挑戦しようと思いました」。

無邪気なチャレンジ好き。ダンディな風貌の内側に、少年のような一面が垣間見える。レース参戦に向けて、中川さんが選んだのはイタリアの名車「ドゥカティ」だった。

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「この本の影響で、ドゥカティの世界に魅了されたんです」と中川さん。この本の作者である名越公一さんは、Team Foundation(チーム・ファンデーション)という、ドゥカティのチューニングを行うメンテナンスガレージのオーナー。

「レーサーとして世界中を転戦した経験がある方で、業界内でもちょっと格が違う人。名越さんにチューニングしてもらうと、同じバイクに乗っているとは思えないほどに差が出るんです」とY。

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▲ドゥカティの特徴のひとつトラスフレーム。鉄を編んだような独特な形状が、絶妙な乗り心地と曲がり心地を生み出す。

この一冊でドゥカティの美しさや哲学に惹かれたと中川さん。現在では、3台のドゥカティを所有している。「中川さんのドゥカティは名越さんにチューニングしてもらったやつなんですよね」と悔しさをにじませながら語るY。

心に刺さったものをとことん突き詰める、中川さんの行動力と探究心に驚く。それにしても、ここまで人を魅了するドゥカティとは、どのようなバイクなのだろう。

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▲名越公一さんにチューニングしてもらった中川さんの愛車「ドゥカティ スーパーバイク999S」。

ドゥカティの乗り応えは、国産のバイクでは味わえないものだという。「国産は万人受けするバイクを作ることが多くて、個性が弱くなっていく。それに比べると、ドゥカティは走り好きのためのバイクっていう個性がはっきりしている」と編集長のY。

「スピードを抑えて乗っても、もっとアクセルを開けろってバイクにせっつかれる」と中川さんが語るように、パワフルな乗り心地がドゥカティの魅力だ。

ドゥカティの特徴であるトラスフレームも、より早く走るという機能を突き詰めて選ばれたものだという。バイクの知識がない僕は、デザインの美しさにばかり惹かれてしまうが、機能を突き詰めた結果の美しさなのだ。

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中川さんは、ドゥカティと共に50歳からアマチュアレースに参戦、デビュー戦では優勝という結果を残す。「デビューで優勝したら、そりゃハマりますよね(笑)」とY。一時期に比べると参戦する回数は減ったというが、これからもレースに出場していくとのこと。

 

レースはオトナが童心に返る場所

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ドゥカティのようなバイクに乗るライダーが追い求めるスピード。それを最も味わえるのがレースだ。

中川さんはバイクレースの魅力をこんなふう語る。「本気で集中しないと、アマチュアであってもレースは走れない。深く集中して、自由自在にバイクを操れたときの快感は最高やね」。

また、レースが持つ独特の雰囲気も格別だという。「スタート前のピリピリした空気感、緊張感がたまらない」と中川さん。少しのミスが命の危険に繋がる中で、スピードを追い求めるレース。その緊張感や高揚感は、日常では絶対に味わえない刺激だろう。

タイムを競うだけというシンプルさもレースのいいところと中川さん。同じくアマチュアレースに出場するYもそれに同意する。「レース仲間の上下関係も、タイムで決まるんですよね。職業とか年齢とか関係なくて、より速いやつが上っていうわかりやすさがいい(笑)」。

速さだけを競うレースは、オトナの事情とは無縁の世界。レースは、オトナが少年のようにがむしゃらになれる場所でもあるのだ。

レースで一番好きな瞬間は?と質問してみると、意外な答えが返ってきた。「一番好きなのはゴールしたときかな。緊張感から解き放たれた瞬間のホッとした感じが好きやね。レースが終わって、ゆったりと走っているときの気持ち良さがなんともいえない」。

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▲中川さんが一番印象に残っているというレース。レベルの高いクラスを制した。ライダーとしての自信を手に入れたレースだったという。

また、サーキットに通っているとどんどん仲間も増えていくという。「西日本だと鈴鹿と岡山のサーキットに集まってくるので、みんな自然と仲良くなる。岡山のサーキットだと、レースの前日は駐車場で酒盛りしたり、レース後はみんなでBBQしたり、同じ趣味の仲間とワイワイできる」。

緊張と緩和、そんな非日常感をたっぷり味わえるのがレースの魅力だ。

 

バイクを中心に広がる交友関係

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一人でフラッとでかけても、気軽に同じ趣味の仲間と出会えるのもおもしろいと中川さん。「バイク好きがツーリングで立ち寄るお茶屋さんとか道の駅があって、そういうところに自然に集まってくるんですよ。みんな趣味が同じだから、初対面でもすぐに打ち解ける」。

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▲ヘルメットにもこだわる中川さん。後頭部のブルドッグのイラストはご自身でデザインされた。

バイク好きが集まる場所では、さまざまな人が一期一会を楽しんでいるという。「同じバイク好きでも、いろいろな職業の人がいておもしろい。こだわりが強い個性的なタイプが多いので、合わない人は合わないですけどね(笑)」。

また、バイクならではの短いコミュニケーションもさっぱりしていていいと中川さん。「信号で止まったときに横の人に話かけられるんですよ。それ、何のバイクですか?って感じで(笑)」。この話には、Yと取材に同行していたバイク好きの営業も大きくうなずく。信号コミュニケーションは、ライダーあるあるのようだ。

 

競争心、探究心、好奇心、本能をくすぐるバイクの世界

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気軽に乗れるオフロードバイクや長距離のツーリングなど、中川さんは、バイクの楽しみ方をどんどんと広げているという。

今後の展望を伺うと「とりあえず70歳までは乗り続けたい」とのこと。「嫁ともタンデムでツーリングに行こうって話をしていて、新しくヘルメットも買ったんですよ(笑)」。

奥さんとの計画を楽しそうに語る様子を見ると、70歳を超えてもイキイキと新しいことにチャレンジしていそうだ。

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▲BMW R1200GS HP。長距離でも全然疲れないというお気入りのツーリングバイク。

こだわりを詰め込んだバイクガレージ、速さを追い求めて作られたドゥカティ、ギリギリの世界でタイムを縮めるレース、一期一会のバイクコミュニティ……。

中川さんの話を伺いながら、バイクは単なる移動手段ではないことに気づかされた。

中川さんは、自身の中にある競争心、探究心、好奇心など、本能や欲望のようなエネルギーをバイクにぶつけているように感じる。バイクには、人間に備わった本能や欲望をくすぐり、激しく燃やす装置のような力があるのだ。

80年代に多くの若者がバイクに熱中した理由がよくわかる。僕自身、自分の中にある得体の知れないエネルギーをどう処理していいのかわからなくなることがあった。バイクにハマった若者たちは、湧き上がる本能に従ってアクセルを全開にし、止めどなく溢れる欲望を満たしていたのだ。

すっかりバイクを通りすぎてしまった僕は、そんなことを考えながら、少し悔しい気持ちになった。限界ギリギリのスピードでコーナーに侵入し、暴れるマシンを制御しながら一気に駆け抜ける。そんなレースの一幕を妄想するだけで、背筋がゾクゾクする。

今回の取材を通じて、バイクの魅力を深く体験することができた。中川さんのようにレースに出場する機会が減っても、違った楽しみ方をすぐに見つけることができるし、人との繋がりがそれを後押しする。バイクは、身体が動き続ける限り楽しめる、懐の深い趣味なのだ。

「もしかしたら今からでも……」。そんな感情が脳裏をかすめながら、今回の取材を終えた。

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